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だいぼさつとうげ

大菩薩峠

中里 介山

34 白雲の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 104,838 字 · 204 页

青空文庫

実は、もっと早く、二人ここで相見た最初の時に、引合せの老爺のことから緒が開かれなければならない順序なのですが、船のことが先になって、次に人物論に花が咲いたものですから、勢い七兵衛おやじのことは、最後の時に繰りのべられてしまいました。

「名取川で、蛇籠を作っていた怪しい老爺――あれには全く度胆を抜かれましたよ、あなたの御家来に、あんな怪物がいようとは思いも及びませんでした、あれには怖れました」

田山白雲が全く恐れ入ったもののようにこう言うと、それを引受けたのは駒井甚三郎ではなく、傍らに介添役のお松でありました。

「そのおじさんは、それからどうなさいました」

「いや、おっつけここへ来るには来るはずなのだが、一つ土産を持って来ると言ったが、そのみやげたるや」

ここまで来た時に、あわただしくこの部屋の前に立ったのが、清澄の茂太郎でありました。

「田山先生――」

「やあ、茂坊か」

「入ってもようござんすか」

「お入りなさい」

と許諾を与えたのは、駒井甚三郎でした。

そこで室内に走り込んだ清澄の茂太郎が、まず田山先生に向って問いかけたのは、次の言葉であります。

「田山先生、七兵衛おやじはどうしたの?」