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たいしゅうのちえ

大衆の知恵

中井 正一

「シナリオ」1951(昭和26)年9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,439 字 · 5 页

青空文庫

私はこの雑誌の五号で「カットの文法」という文章を書いたが、あの中で私は次のように書いた。カットをつなぐのは、ほんとうは、観衆なのである。観衆が、あの場面と場面をどんなこころで、つないで見るかを頭に置いて、シナリオ・ライターも、監督も、フィルムをつないでいくのである。

フィルムには「である」「でない」の言葉がカットとカットの間にないから、小説家が勝手に書くように簡単にいかないのである。

シナリオ・ライターの悩みはここにあるのである。

シナリオ・ライターは、だから直接、大衆のこころの中に割り込んで、一緒に、シナリオを書いていかなくてはならない。

大衆のこころのどまんなかに融け込んでいなくては、うまいシナリオとはなってこないのである。

もはや、映画が、独りよがりの、個人的天才の芸術のための芸術というようなものではありえなくなりつつあると共に、この種の芸術論をでんぐりかえして、新しい天地に、自分独特の世界を切り展きつつある。

そこで、シナリオ・ライターが、大衆の知恵を、どう測定し、どの角度から、その懐ろに飛び込んでいくかが、大きな問題となってくるのである。