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てんぐいわのさつじんま
天狗岩の殺人魔
山本 周五郎
「少年少女譚海」1938(昭和13)年春の増刊号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,872 字 · 18 页
「いったい是は」
「叱ッ、黙って――」
平野氏に一言も云わせず、黙って行くこと凡そ二百メートル、道が左へ曲ると、その刹那だった。――左の崖の上へのしかかるように突出ていた天狗岩、五十貫はあろうと思われる巨岩が、突然ごうごうと崩壊した。
「あっ※(感嘆符二つ、1-8-75)」
平野氏が絶叫する、それより疾く、落下した天狗岩は馬車を粉砕し、砂煙をあげ乍ら、狂い嘶く馬もろとも、断崖から海へと凄じい物音を立てながら墜落して行った。
ほんの一瞬の、そして実に驚くべき出来事だった。――夢でも見ているように茫然と立竦んでいる平野氏を、祐吉がつと崖下へ引寄せた。
「静かに、いま誰か降りて来ますよ」
「――――」
「騒がないで見ていて下さい」
囁いていると、やがて、崖の裂目を伝いながら、ずるずると道へ降りて来た者がある。見るとそれは種田京太郎だった。
「あ! 京太郎」
平野氏が我を忘れて叫んだ。と、その声に恟として振返る京太郎、そこに平野氏の姿を見るや、恐ろしい声で何やら喚きながら、踵を返して逃出そうとした。――同時に、
「待てッ」
叫びながら、飛鳥のように跳掛った祐吉、相手の頸筋へがんと一つ、唸りを生じて鉄拳がとぶ、京太郎はよろめいたが、