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てんぐいわのさつじんま

天狗岩の殺人魔

山本 周五郎

「少年少女譚海」1938(昭和13)年春の増刊号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,872 字 · 18 页

青空文庫

目つきのイヤに悪い男

――何年となく使古したもので、中には乱暴な鉛筆の走書きで、仮名ばかりが並べて書いてある。心覚えの手帖だろう。何の気もなく最後の一枚を見ると、

※(始め二重山括弧、1-1-52)――ぐひんさんをけずる、五えん※(終わり二重山括弧、1-1-53)

という字があった。

「何だ、ぐひんさんを削るとは」

呟きながら次をめくると、

※(始め二重山括弧、1-1-52)――ぐひんさんをけずる、五えん※(終わり二重山括弧、1-1-53)

再び同じ事が書いてある。日附を調べてみると、この一週間ばかり毎日同じ事が続いていた。そしてその前には、

※(始め二重山括弧、1-1-52)――ひがしの墓をけずる、二えん※(終わり二重山括弧、1-1-53)

とある。

「伯父さん、ぐひんさんて何ですか」

祐吉が振返って訊いた時、道の方から京太郎が大声に叫んだ。

「伯父さん、警察から人が来ましたよ」

目つきのイヤに悪い男

翌る朝、平野氏は紅茶を啜り乍ら新聞を読んでいた。――そこには昨夜の殺人事件がでかでかと報道してあった。

一、被害者は石屋の源助老人である。

一、加害者は殺人鬼権六の見込。

一、警官隊は山狩りを始めている。