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てんぐいわのさつじんま
天狗岩の殺人魔
山本 周五郎
「少年少女譚海」1938(昭和13)年春の増刊号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,872 字 · 18 页
そんな事が主要な記事だった。
殺人鬼権六とは何者ぞ。彼は半年ほど前から、京、大阪、名古屋へかけて、富豪紳商を襲っては残虐極まる殺人を犯し、金品を強奪して煙のように消える、実に神出鬼没の兇賊であった。――それが今や、この南伊豆の平和境へ現われ、銀行家宮橋氏に五千円の脅迫状を叩きつけた許りか、早くも無残な殺人を敢行したのである。
「恐るべき怪賊、憎むべき兇漢、――我等は徒に警察力を頼まず、各自武器を執って自警のために決起すべきだ!」
と、新聞はいきり立って書いていた。
「お早ようッ、伯父さん」
庭口から祐吉が飛込んで来た。
「ええ、吃驚した、もう少し静かにせんか、貴様の方が殺人鬼よりずっと乱暴だぞ!」
「新聞を読みましたか」
祐吉は構わず、どかっと椅子に掛け、
「警察ではもう権六権六で血眼になっていますよ。――然し僕の観察では、この事件はそう単純には解決ないと思いますね。――僕にはどうも、あの手帖に書いてあった『ぐひんさんを削る』というのが気になってならない」
「まだあんな手帖に拘わっているのか」
「あんな手帖と云うけど、あの手帖のお蔭で石屋の源助という身許が分ったんですからね。