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てんぐ
天狗
大坪 砂男
「宝石 七、八月合併号」岩谷書店、1948(昭和23)年8月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,545 字 · 19 页
た祠がある。御本体はいずれ何やらの化石であろうと、狭く組んだ格子の塵を吹いて覗きこんだら、願かけした里人の寄進の面がずらり、赤鼻に白鬚をだらりと垂れたのから青っ面の木っ葉天狗にいたるまで、目のふちどりは厳しくとも瞳はぽっかりと刳り貫かれて、薄暗い板壁の三方にだらしなくぶら下っていた。何だくだらぬと軽蔑した心の隙――そのエアー・ポケットにいま赤蜻蛉が落ちこんで、さては天狗となって羽ばたいたのだ。
かくて想案が成っては、後は細部にわたって手順よく整頓しながら、二、三の力学的実験を試みる番になった。
飛切の術を行わせるエネルギーは第一想で得た竹の弾力を用いればよく、強力なものを選んで左右数本ずつに綱を渡して一つに纏め子供の遊ぶパチンコの理で、渓流の反対側へ山毛欅の林を越しさえすれば丁度沼の中頃に落下するだろう。竹藪の根元は沼面より一七M高く、その間の直線距離は八二Mと三角術で測量して、事の易きを思わせた。
先ず第一に喬子の体重が正確に得られなければ計算の基準がなりたたない。その体重秤は男子浴室に一台備えてあるばかりとて、ここに喬子を誘って量ることは何としても妙策が浮かばず、よんどころなく、喬子の日々の行動を思い返してみることにした。