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たいへいようまじょう
太平洋魔城
海野 十三
「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1939(昭和14)年1月~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 93,147 字 · 187 页
潜水服の中にびっしょり冷汗をかきながら、生きた心地もないリーロフ大佐は、今は、酒の酔いもさめてしまって、ふうふういっていた。
その時とつぜん下腹に、はげしい痛みをおぼえた。
「あ、なにをする!」
といったが、あとはくるしそうなうめきにかわって、どたりとその場にころがった。海藻がびっくりしたようにゆらゆらとゆれて海底の泥が煙のようにたちのぼっている。――太刀川時夫が、さっきからねらっていた一撃が、リーロフの潜水服のよわい箇所の下腹へはいったのである。
「口ほどもないやつだ。さあ、このにせ当番水兵の手足をゆわえてしまえ」
太刀川は、リーロフの声をまねして、隊員に命令をくだした。
隊員は、きゅうに元気づいて、そこにたおれているリーロフのまわりにあつまった。そして腰につけていた綱をはずすと、リーロフの手と手、足と足とを、ぎゅっとゆわえてしまった。
(ふーん、やっぱりリーロフ大佐は強いなあ。たった一撃で、相手をたおしてしまった)
リーロフの強いことを知っている隊員たちは、これで始めて、どっちが本物のリーロフであるかを知って安心したのだ。まったくのところ、彼らはリーロフ以上に腕力のつよい軍人を知らなかったのだから、そうおもうのもむりではなかった。