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たいへいようまじょう
太平洋魔城
海野 十三
「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1939(昭和14)年1月~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 93,147 字 · 187 页
怪しい空缶
どういうものか、ちかごろしきりと太平洋上がさわがしい。あとからあとへと、いくつもの遭難事件が起るのであった。
このことについて、誰よりもふかい注意をはらっているのは、わが軍令部の太平洋部長であるところの原大佐であった。
その原大佐は、いましも軍令部の一室に、一人の元気な青年と、テーブルをかこんでいるところだった。
「おい太刀川。この次々に起る太平洋上の遭難事件を、君たちはなんとみるか」
力士のような大きな体、柿の実のようないい艶をもった頬、苅りこんだ短い髭、すこし禿げあがった前額、やさしいながらきりりとしまった目鼻だち――と書いてくれば、原大佐がどんなに立派な海軍軍人だか、わかるであろう。
「さあ、――」
太刀川青年は、膝のうえに拳をかためた。なんのことだか、よくわからない。
いま原大佐からきいたところによると、この春、太平洋横断の旅客機が行方不明になってしまった事件がある。それから間もなく、四艘から成るわが鰹船の一隊が、南洋の方に漁にでたまま消息を絶ってしまった。つい最近には、ドイツ汽船が、「救助たのむ」との無電を発したので、附近を航行中であったわが汽船が、時をうつさず現場におもむいたところ、そのドイツ汽船のかげもかたちもなく、狐に化かされたようであったという話がある。