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たいへいようまじょう

太平洋魔城

海野 十三

「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1939(昭和14)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 93,147 字 · 187 页

青空文庫

呉軍港をおさえるのには、これはどうしても必要だ。どうだ、リーロフ少将」

ケレンコ司令官の声だ。

「いや、おれは、紀淡海峡一本槍だ。せっかくの勢力を、いくつにも分ける作戦は、どうもおもしろくない」

リーロフは、相かわらず、なかなか剛情だ。

カーテンのかげの太刀川青年は、じーっと息をころして、きいている。

それにしても彼は、どうしてこんなところへはいりこむことができたのか。――

クイクイの神様の三浦は、たくみに衛兵長から鍵をうばうと、何くわぬ顔をしてひきたてられて行き、太刀川と同じ監禁室に入れられた。衛兵たちは、出発前夜の酒と御馳走に夢中になっていたので、三浦をほうりこむと、そのくさい部屋から、あたふたと出ていった。だから、三浦が、太刀川の足の枷をほどくことはなんでもなかったのだ。

太刀川と三浦とは、衛兵にうたれてきずついたダン艇長と酋長ロロのきず口に、とりあえず手当をして、ありあわせの布でしばった。

ダン艇長は、右の腕をうたれ、酋長ロロは耳のところにすりきずをうけただけだが、二人とも、びっくりして気をうしなっていたのであった。

太刀川が「よし!」とさけんで、立ちあがったとき、監禁室の扉を、どんどんとたたく者があった。