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たいへいようまじょう

太平洋魔城

海野 十三

「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1939(昭和14)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 93,147 字 · 187 页

青空文庫

太刀川は、ふしぎに思った。

「お前は、何をいうんだ。今出ていったのは、お婆さんじゃないか。お前は目が見えないわけじゃなかろう」

「そうなんだよ、小父さん」

「何だって」

「おれは目がわるくて、目の前ほんの一、二米ぐらいしかはっきり見えないんだよ」

「ほほう。そうか。そんなに悪い目をしていて、出入口を通る人をあてるなんて、おかしいじゃないか。はははは」

ところが、少年は至極まじめだった。

「ちがうよ。そんなことは、目でみなくたって、おれには、ちゃんと分かるんだよ」

「なに、目でみないでも分かるって、馬鹿なことをいうものでない。いいからもうだまっておいで」

太刀川は、石少年が透視術みたいなことをいうので、ちょっと気味が悪かった。だが、ケント老夫人のことを男だなんて、そんな当りの悪い透視術は、もうたくさんだとおもった。

だが、はたして彼の考えた如く、石少年の言葉はまちがっていたであろうか?

無電室では、四人の係員たちが、器械の前にすわりこんで、耳にかけた受話器の中に相手無電局の電波を、しきりに探しもとめている。

天候状態は、つづいて悪かった。

そこへダン艇長が、顔をこわばらして入ってきた。