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たいへいようまじょう

太平洋魔城

海野 十三

「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1939(昭和14)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 93,147 字 · 187 页

青空文庫

へんないい方ではあるが、なるほど、海魔の姿をよくいいあらわした言葉である。

海面からにょきっと出た首らしいものは、およそ百メートルはあろうと思われる。

それは、くねくねと曲って、ゆらゆらうごいているが、そのぶきみさといったらない。この首の一ばん上に、頭らしいものがついている。首も頭も緑色をしていて、ぬらぬらとしたいやらしいつやをもっている。とつぜん、ぱっぱっぱっと、頭のところから、目もくらむような光が出た。

「あ、光った!」

窓のところへよって、ふるえあがっていた艇員たちは、それを見て、一せいに叫声をあげた。

乗客たちは、もう生きた心地もなく、床の上をはいまわったり、頭をかかえてうめいたり、座席にかじりついて、神の名をよんだりするのであった。

むりもない。海面から出た首と頭とだけで百メートルにちかいのである。すると海面の下にかくれている胴体や尻尾は、と思うと、この世のこととは思えないのである。

(おれたちは、夢を見ているのじゃないかな)

しかしそれは、けっして夢ではなかった。

大海魔は、しずかに頭をうごかして、ふしぎそうに、まい下りてくる飛行艇を見あげ、照空灯のような目を、ぴかぴかと光らせるのであった。