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たいへいようまじょう
太平洋魔城
海野 十三
「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1939(昭和14)年1月~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 93,147 字 · 187 页
この室内もどことなく潮の香くさく、しめっぽい。
「海に近い場所かな」
と思ったが、瞬間、ある考えが、頭をかすめた。
「ひょっとすると、海底にある建物ではあるまいか。いや、まさか、そんな馬鹿なことが……」
自分の考えを自分で、うち消すようにつぶやいた時である。
「おい、小僧。目がさめたか」
とつぜん声がした。妙ななまりのあるロシア語だった。
「えっ、――」
太刀川は、声のする方をふりかえってみた。
おどろいたことに、冷光灯かがやく壁のところに、ぽっかりと四角な窓が開き、その中から一つの赤い顔が、こっちをのぞいて、あざ笑っているのであった。
その顔は、鼻の形、額の恰好からいって、たしかにユダヤ人だ。
「うふふふふ。やっと、気がついたようだね。だが、不景気面をしているところをみると、まだ夢でもみているのかね。おい、日本蛙、ここをどこだと思う。海の底だよ。海の底も底、太平洋の底だよ。ある仕掛で渦を起し、貴様をすいこんで、ここへ運んできたのは、貴様にちょっとばかり用があったからだよ。うっふふふ、そうおどろかんでもよい。ちょっと待て、もっとよいところへ案内してやるからな……」