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きかいなさいかい

奇怪な再会

芥川 竜之介

「大阪毎日新聞夕刊」1921(大正10)年1、2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,996 字 · 43 页

青空文庫

「誰か呼んでいるようですもの。」

お蓮は彼に寄り添いながら、気味の悪そうな眼つきをしていた。

「呼んでいる?」

牧野は思わず足を止めると、ちょいと耳を澄ませて見た。が、寂しい往来には、犬の吠える声さえ聞えなかった。

「空耳だよ。何が呼んでなんぞいるものか。」

「気のせいですかしら。」

「あんな幻燈を見たからじゃないか?」

八

寄席へ行った翌朝だった。お蓮は房楊枝を啣えながら、顔を洗いに縁側へ行った。縁側にはもういつもの通り、銅の耳盥に湯を汲んだのが、鉢前の前に置いてあった。

冬枯の庭は寂しかった。庭の向うに続いた景色も、曇天を映した川の水と一しょに、荒涼を極めたものだった。が、その景色が眼にはいると、お蓮は嗽いを使いがら、今までは全然忘れていた昨夜の夢を思い出した。

それは彼女がたった一人、暗い藪だか林だかの中を歩き廻っている夢だった。彼女は細い路を辿りながら、「とうとう私の念力が届いた。東京はもう見渡す限り、人気のない森に変っている。きっと今に金さんにも、遇う事が出来るのに違いない。」――そんな事を思い続けていた。するとしばらく歩いている内に、大砲の音や小銃の音が、どことも知らず聞え出した。