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きかいなさいかい
奇怪な再会
「大阪毎日新聞夕刊」1921(大正10)年1、2月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,996 字 · 43 页
一
お蓮が本所の横網に囲われたのは、明治二十八年の初冬だった。
妾宅は御蔵橋の川に臨んだ、極く手狭な平家だった。ただ庭先から川向うを見ると、今は両国停車場になっている御竹倉一帯の藪や林が、時雨勝な空を遮っていたから、比較的町中らしくない、閑静な眺めには乏しくなかった。が、それだけにまた旦那が来ない夜なぞは寂し過ぎる事も度々あった。
「婆や、あれは何の声だろう?」
「あれでございますか? あれは五位鷺でございますよ。」
お蓮は眼の悪い傭い婆さんとランプの火を守りながら、気味悪そうにこんな会話を交換する事もないではなかった。
旦那の牧野は三日にあげず、昼間でも役所の帰り途に、陸軍一等主計の軍服を着た、逞しい姿を運んで来た。勿論日が暮れてから、厩橋向うの本宅を抜けて来る事も稀ではなかった。牧野はもう女房ばかりか、男女二人の子持ちでもあった。
この頃丸髷に結ったお蓮は、ほとんど宵毎に長火鉢を隔てながら、牧野の酒の相手をした。二人の間の茶ぶ台には、大抵からすみや海鼠腸が、小綺麗な皿小鉢を並べていた。
そう云う時には過去の生活が、とかくお蓮の頭の中に、はっきり浮んで来勝ちだった。