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きかいなさいかい

奇怪な再会

芥川 竜之介

「大阪毎日新聞夕刊」1921(大正10)年1、2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,996 字 · 43 页

青空文庫

」と云った。

「何だい、これは?」

牧野はお蓮が礼を云う間に、その缶詰を取り上げて見た。

「貼紙を見給え。膃肭獣だよ。膃肭獣の缶詰さ。――あなたは気のふさぐのが病だって云うから、これを一つ献上します。産前、産後、婦人病一切によろしい。――これは僕の友だちに聞いた能書きだがね、そいつがやり始めた缶詰だよ。」

田宮は唇を嘗めまわしては、彼等二人を見比べていた。

「食えるかい、お前、膃肭獣なんぞが?」

お蓮は牧野にこう云われても、無理にちょいと口元へ、微笑を見せたばかりだった。が、田宮は手を振りながら、すぐにその答えを引き受けた。

「大丈夫。大丈夫だとも。――ねえ、お蓮さん。この膃肭獣と云うやつは、牡が一匹いる所には、牝が百匹もくっついている。まあ人間にすると、牧野さんと云う所です。そう云えば顔も似ていますな。だからです。だから一つ牧野さんだと思って、――可愛い牧野さんだと思って御上んなさい。」

「何を云っているんだ。」

牧野はやむを得ず苦笑した。

「牡が一匹いる所に、――ねえ、牧野さん、君によく似ているだろう。」

田宮は薄痘痕のある顔に、一ぱいの笑いを浮べたなり、委細かまわずしゃべり続けた。