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きかいなさいかい

奇怪な再会

芥川 竜之介

「大阪毎日新聞夕刊」1921(大正10)年1、2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,996 字 · 43 页

青空文庫

「御覧。東京はもうあの通り、どこを見ても森ばかりだよ。」

成程二階の亜字欄の外には、見慣ない樹木が枝を張った上に、刺繍の模様にありそうな鳥が、何羽も気軽そうに囀っている、――そんな景色を眺めながら、お蓮は懐しい金の側に、一夜中恍惚と坐っていた。………

「それから一日か二日すると、お蓮――本名は孟蓮は、もうこのK脳病院の患者の一人になっていたんだ。何でも日清戦争中は、威海衛のある妓館とかに、客を取っていた女だそうだが、――何、どんな女だった? 待ち給え。ここに写真があるから。」

Kが見せた古写真には、寂しい支那服の女が一人、白犬と一しょに映っていた。

「この病院へ来た当座は、誰が何と云った所が、決して支那服を脱がなかったもんだ。おまけにその犬が側にいないと、金さん金さんと喚き立てるじゃないか? 考えれば牧野も可哀そうな男さ。蓮を妾にしたと云っても、帝国軍人の片破れたるものが、戦争後すぐに敵国人を内地へつれこもうと云うんだから、人知れない苦労が多かったろう。――え、金はどうした? そんな事は尋くだけ野暮だよ。僕は犬が死んだのさえ、病気かどうかと疑っているんだ。