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「なら」にあそびて

「奈良」に遊びて

宮本 百合子

「女子文芸 第一巻第三号」1918(大正7)年5月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,777 字 · 4 页

青空文庫

の人々は、きっと、周囲の自然物を深く愛して、そしてその愛着を永久に保ちたい為めに、それを絵画に現わし、文章に認めたのであろう。特に建築の模様などに、その色が深いのであった。パチコの花の如き実に巧みに取扱われていました。

東大寺の大きな鐘楼の傍から、石段を降りますと、「大湯屋」という古い建築物に突き当ります。

昔、或る特別な貴族階級に丈、使用された浴場の跡らしいものでした。そして、そこ丈が、あたりの寺院とか神社の建物と異った一種の趣きを現わしていました。

加之、そこには昔ながらの建物に相応しい藤棚があり、庭があり、泉水がありました。全体として、狭いながらも、それはチャンと整った一区画を示しているものでした。総てに懐しい昔の錆が現われて、石に生えてる苔までが、私をチャームするのです。此処の前には、彼岸桜が美しく咲いていました。

其処に立っていますと、妙に感傷的になって思いは過去へ過去へと馳せて行くのでした。暫し想いを凝らせると、あの髪を角髪に結んだ若い美しい婦人が裳裾を引きながら、目の前を通るように覚えるのでした。

(四)

こうして、何処を顧みても、私達の野心を刺戟する何物もない「奈良」