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ちぎりきぬ

契りきぬ

山本 周五郎

「ロマンス」ロマンス社、1949(昭和24)年10月~11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 32,757 字 · 66 页

青空文庫

――いいえそうじゃない、このひとたちもみんな気の毒な身の上なんだ。こんなどん底のような生活へ堕ちるまでには、悲しい辛い事情があったに違いない。ああやって楽しそうに笑っているけれど、心のなかではみんな恥かしさと苦しさに泣いているのだ。

女たちはなおしきりに、その五人づれの侍客の噂を続けた。かれらは衣巻なにがしという、肥った若者を中心に、いつも同じ顔ぶれでやって来る。おなつはいちどしかその座敷へ出ないが、五人とも品のいい若者で、こんなところの女だからといってみくだすふうもなく、寧ろ面白そうに飲んで遊んで、ときにはかなり多額な金を置いてゆくということであった。

「でも北原ってひとだけはべつだわね」

「あのひと女嫌いなんですってよ」

「笑わしちゃいけないよ」お菊が鼻でせせら笑いをした。

「――男でいて女が嫌いなら片輪者さ、今はまあ堅そうに澄ましてるけど、むっつりなんとかって、あんなのがいちど味を覚えたらたいへんなんだから」

「じゃあお菊さんくどいたらどう」

「だめよ、お菊さん振られちゃったのよ」

「なにさ、そういうおまえだって」

きゃあと叫びごえがあがって、また叩いたり押したりして、みだらな言葉を投げあった。