轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
おくのうみ
奥の海
久生 十蘭
「別冊週刊朝日」1956(昭和31)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,005 字 · 26 页
もしそうだったら、なぜ出て逢わなかったか、その辺がどうしてもわからない。
三日ほどクヨクヨと考え詰めていたが、結局は、またしても読みの深い女心を読みそくない、なにかたいへんな失敗をやらかしたのにちがいないと、はかないところへ詮じつけた。
七戸の藩中に、大阪廻米を扱っていた川村孫助という御蔵方がいる。川口の米会所で昵懇だったのを思いだし、廻船の上乗りにでもしてもらって江戸へ帰ろうと、郭内のお長屋をたずねると、川村孫助はみすぼらしい金十郎の風態をそば眼するなり、ひとりでのみこんで、斗南の白並というところにある御船番所の御小人に推挙してくれた。
白並は小川原という汐入沼のそばにある、三十戸ばかりの漁村で、沼尻で七戸藩の藩船の冬の船溜になっている。夏は霧がかかり、秋は十月から雪が降り、沼の泥深いところに鹿や熊がいる。情けない土地柄だということだったが、来てみると瑰の実ばかり落々たる砂丘まじりのなぎさがはてしもなくひろがり、そのむこうに、秋ざれの陸奥の海が轟くような音をたてて巻きかえしている。いかにも本土の果というような、わびしい風景であった。
御船手御小人は、藩船を預り、湊入湊出のたびに船改めをする。