轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
おんなけんし
女剣士
「小説新潮 第八巻第八号」1954(昭和29)年5月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 36,694 字 · 74 页
滝の冷気で小さくちぢんでいるものだから、先をひっぱってゴシゴシと皮をしごいてみる。山気生動とはこの物でなければならないものだ。富岳も浅間も山気生動し雲をひらく如くであるが、真に山気の生動し真に雲をひらくものとはこの一物のほかには有り得ない道理なのだ。
恋愛とは何ぞや。恋愛もまた山気だ。恋愛に邪恋の有りえよう筈はない。百貫の獅子、百貫の虎、百貫の熊の雌雄が山中に木を倒し岩を砕いて荒れ狂う如きもの、あるいは林間の静寂に一体となってただ感きわまって叫ぶが如きもの、これが恋愛である。雌雄のあるのみ。邪恋のあるべき道理はない。
朝之助はかく観じた。罪もタタリもあるべきではない。
しかし、悲しや、彼のシミジミうち眺めるものは、そも何物であるか。生動する山気は影だにもない。ただ皮である。シワである。肉ですらもない。百歳の老爺があわれみを乞う姿であった。
「かくては熊にすらも劣るな。オレがこの山中で殺した熊、熊、熊。今ではその熊にすらも劣っている」
朝之助は長大息した。
その時、その熊が現れたのである。滝の裏はゴウゴウと音がこもって他のいかなる音もきくことができない。