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じょせい

女婿

佐々木 邦

「主婦之友」1925(大正14)年9月~11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,954 字 · 43 页

青空文庫

という里の母親の毎度乍らの吹聴が意味深長に聞えて困った。何となく肩身が狭い。そこへ移転の問題が起って、これという相談もなく、

「あなた、越しましょうよ」

と殆んど高圧的に食わされた。転地の代りだというから何とも故障の申立てようがなかった。次の日曜に妙子さんのお里から書生や女中達が手伝いに押しかけて来た。母親は無論何彼と采配を振った。そうして自分現在の俸給では余程考慮を要するくらいの家作へ納まって、

「あなた、新しくて好いでしょう? もっと広いのもあるんですけれど、里へはこゝが一番近いから無理に立ち退かせたのよ。お家賃の出ないのが何よりですわ」

と妙子さんに言われた時、清之介君はイヨ/\女婿らしい心持になった。しかしもうこの上里方のお世話になりたくないと思っていた矢先だったから、

「妙子さん、家賃は矢張り定めて戴いてお払い致しましょう。それでないと私が困ります」

と主張したが、妙子さんは、

「いゝえ、構いませんのよ。私、何うせ一軒戴くんですもの。生憎一番好い家が一番遠いんで、ここじゃ大変損ですけれど、まあ辛抱致しましょうね。その代り電話を引いて戴く約束ですから」