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じょせい
女婿
佐々木 邦
「主婦之友」1925(大正14)年9月~11月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,954 字 · 43 页
「私、背中から水を浴びせられるように悪寒がして、迚も起きちゃいられませんわ」
とガタ/\震え出した。
「流感か知ら」
と父親は初めて思い当った。
「休まして戴きましょう。何にも心配することはありませんよ。もう此処がお前の家ですからね。寝ていようが起きていようがお前の勝手です」
と母親は娘に智恵をつけて、
「児島さん、もし、児島さん、一寸」
と仲人を麾いた。
「実は娘が流感らしいんでね」
と父親が用件を伝えた。今回は仲人でも平常は会社の下僚だから、児島さんは、
「はゝあ、それは/\」
と恐縮して、
「如何計らいましょうか?」
「直ぐ寝かしてやってくれ給え。それから医者だ。急いでね」
と父親は悉皆支配人になってしまった。
妙子さんは早速別間で床についた。斯ういう場合の用心にと羽二重の夜のものまで持って来ていたが、花婿の方でも、チャンと用意してあった。これによっても当時世界風邪が何れくらい流行っていたか察しられる。それは然うとして親戚の面々は急に手持ち無沙汰になって、立ったり坐ったりしている。
「皆さんは兎に角……ホテルじゃない、精養軒の方へお引き取り下さい。御覧の通りの次第ですから、婿だけ披露式に出すことと致します」