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じょなん

女難

国木田 独歩

「文藝界」1903(明治36)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,695 字 · 45 页

青空文庫

「イイエそうではないのでございます、全く自己流で、ただ子供の時から好きで吹き慣らしたというばかりで、人様にお聞かせ申すものではないのでございます、ヘイ」

「イヤそうでない、全くうまいものだ、これほど技があるなら人の門を流して歩かないでも弟子でも取った方が楽だろうと思う、お前独身者かね?」

「ヘイ、親もなければ妻子もない、気楽な孤独者でございます、ヘッヘヘヘヘヘ」

「イヤ気楽でもあるまい、日に焼け雨に打たれ、住むところも定まらず国々を流れゆくなぞはあまり気楽でもなかろうじゃアないか。けれどもいずれ何か理由のあることだろうと思う、身の上話を一ツ聞かしてもらいたいものだ」と思いきって正面から問いかけた。人の不幸や、零落につけこんで、その秘密まで聞こうとするのは、決して心あるもののすることでないとは承知しながらも、彼に二度まで遇い、その遇うた場所と趣とが少からず自分を動かしたために、それらを顧慮することができなかったのである。

「ヘイ、お話ししてもよろしゅうございます。今日はどういうものかしきりと子供の時のことを想いだして、さきほども別荘の坊ちゃまたちがお庭の中で声を揃えて唱歌を歌っておいでになるのを聞いた時なんだか泣きたくなりました。