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つまのざ

妻の座

壺井 栄

「新日本文学」1947(昭和22)年8月、1949(昭和24)年2月~4月、7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 82,695 字 · 165 页

青空文庫

それは貞子の閑子に対して始めから感じていた気持を、親切な思いやりにくるんで希望した言葉で、ミネの心にもぴんと応えたのであったが、閑子自身はそれをどのように感じとったものであったろうか。そのごに二度三度ミネの家へきた閑子は、いつも忙しがってばかりいた。

「ほんとに大変なのよ。いきをつく間もない位なの。だって、五人の家族が、その日着る下着にも不自由してる位なんですもの。四時半に起きて四つのお弁当で送り出すことだけでも大変なの。からだがもち切れるかと思うほどよ。これまでが独りの呑気暮しだったから、なかなか馴れないのね。何しろハガキ一枚かくひまがないのよ。」

「そんなこといわずに、少し遊びなさいよ。貞子さんがいってたじゃないの。」

「わかってるわ。だけどね姉さん、家の中へ入ってごらんなさい。子供と遊ぶには一そう忙しくしなくちゃならないのよ。家政婦ね。」

「そうだろうね。永い間の不自由のあとだもの。そのかわり喜んでくれるでしょう。」

「子供たちだけは、私のすることが何もかも珍らしかったり、うれしかったりするらしいわ。」

「野村さんは?」

「さあ。」

はにかみでなく閑子は目をそらす。