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つまのざ
妻の座
壺井 栄
「新日本文学」1947(昭和22)年8月、1949(昭和24)年2月~4月、7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 82,695 字 · 165 页
この相違は教養のちがいであり気質のちがいであるだけでなく、おかれてきた境遇のちがいでもあった。その頃のミネはまだ小説を書こうなどというあてはなかった。信州の温泉などへきてはいても、経済的な負担は千恵子の方でもっていて、ミネは千恵子のために毛糸をあんでいたのだ。毛糸は高木の足袋であったり、セーターであったり、千恵子の防寒用の下ばきであったりした。それから十何年もたっている。原っぱに立つ喬木のような千恵子も、路地の片隅の雑草のようなミネも、同じ会合へと集っている。壇上に立てば男も及ばぬ雄弁家の千恵子だが、それでもやはり、女として妻として何かの思いはあるのだろう。あるにちがいない――。
女の立場からミネは千恵子の創作に現れる女について考えながら渋谷の駅を出た。そして出口のそとでうろうろしている婦人作家の三谷ひろ子をみつけて、呼びかけた。三谷ひろ子は細いやせた顔をこちらに向け、
「あーらよかった。こないだは失礼。」
戦争中郷里の広島へ疎開し、そこで原子爆弾をくぐってきた彼女も今日のこの集りに間に合うように上京してきたのである。四十をすぎて結婚生活に入ろうとしている彼女は、相手が共産党員であるということのつながりからでもあろうか、上京するなりミネのところへやってきた。