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つまのざ
妻の座
壺井 栄
「新日本文学」1947(昭和22)年8月、1949(昭和24)年2月~4月、7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 82,695 字 · 165 页
三谷ひろ子をみてミネは急に閑子を思い出したのだ。貞子への手紙でミネにはいわずにいてくれという野村の気持が、どうにか納まるものと思ってはいないのだが、さりとて、ミネの方からどんなことがいえよう。今日の大会ではその野村とも顔を合さねばならないと思うと、ミネの心はさわぎ立った。渋谷という地名からも野村や閑子を思い出さずにはいられない。電車にのれば二十分ほどでゆける野村の家で、閑子は今どうしているだろう。今ゆけば野村も子供たちも留守なのだ。いってよく様子を見てこようか。心は迷いながら、おもては楽しそうにミネは三谷ひろ子と肩をならべて会場の方へ歩いてゆく。秋晴れの快い風を全身にうけ強い日ざしに目を細めながら二人は歩いた。ふとって大きなからだのミネと、きゃしゃなひろ子と、その二人のあとから一目でそれと分る足どりの男たちが近づき、そして追いこしてゆく。
「あれは会の人じゃね、一目で分る。その先の人もそうじゃろ。」
ひろ子が広島なまり丸出しでいう。
「あ、あれはKさんですよ、詩人の。そのさきのはSという人じゃないかしら。『農民ごよみ』なんていう小説をかいた。」
道路に向って開け放した建物の広い石段を上りながら、ひろ子は、今気がついたという風に、