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むすめ
娘
岡本 かの子
「婦人公論」1939(昭和14)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,846 字 · 16 页
普通の行き丈けや身幅ものでも、この雄大な娘には紙細工の着物のように見えた。出来上った娘の姿を見て「この娘には、まるで女の嬌態が逆についている」と母親が、がっかりした。けれども、美容師の蔦谷女史は、心から感嘆の声を放った。そして、是非、写真を撮らして欲しいと望んだ。だが、室子がそれを断った。
見合いは順当に運んだ。附添って行った母親の眼にも落度は無いように思われた。
ところが翌日仲介者が断りに来た。
「何分にも、お立派過ぎると、あちらは申すんで――」
「立派すぎるなんて、そんな断りようがあるか」
父親は巻煙草を灰皿にねじ込んで怒った。
室子はもう一度見合いをさせられた。それは口実なしに先方が返事を遷延してしまった。
室子はそういう場合、得体の知れぬ屈辱感で憂鬱になる。そして、自分に何か余計なものかもしくは足りないもののありそうな遺憾が間歇泉のように胸に吹き上がる。けれども、それは直接男性というものに対する抗議にはならなかった。彼女は男性というものには、コーチの松浦を通して対している。
この洋行帰りの青年紳士は、室子の家の遠縁に当り、嘗て彼女をスカールへ導き、彼女に水上選手権を得させ、スポーツの醍醐味も水の上の法悦も、共に味わせて呉れた男だった。