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ふじんとぶんがく

婦人と文学

宮本 百合子

※「作品について」参照

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 180,792 字 · 351 页

青空文庫

広介と明子とがその広介、その明子という二人の男女として作品の世界に登場せられた第一歩からの必然なのである。

さらに一層沁々とこの作品の空気に身を浸してみれば、「くれない」が男性への抗議ではなくて、むしろ自然発生の要素を多分にもつ女性の苦悩の書にとどまっているところにこそ、却ってこの作品の文学としての弱点が在ることが諒解されて来る。広介は「くれない」のなかで、この作者にして、と思わせるほど現象的な面でしか扱われていない。広介という一個の人物が明子にかかわりあって来る諸面に対して、この作家は明子の側からとしての積極的な性格解剖や心理穿鑿は一行も行っていない。広介という人物は、はっきり明子に向って云ったその言葉、その表情、その行動の範囲でだけ作品に現わされていて、明子はと云えば、全心全身のよろこびと苦しみとをふりしぼって、その広介の言葉、動き、表情に応じている姿があるばかりである。

「突きはなして扱えばまことに発見されるものゝ多い世界」であると評されていることは、作者がもうすこし二人の登場人物を客観的に扱っていたならば、という読者の感想と結びつく性質のものである。