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ふじんさっか

婦人作家

宮本 百合子

「婦人と文学」附録、筑摩書房、1951(昭和26)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 28,898 字 · 58 页

青空文庫

人間性は、一つと信じて生きて来た異人種の男女を、悲しい民族の血の覚醒に導いた。中里恒子の題材は、そのような日本の悲劇の追究をとおして、世界的な意味をもつヒューマニティーの課題である。民族の血の力に追いこまれた人々にふたたび高い人間的脱出を示す可能をひそめる題材である。けれども、中里恒子の文学はそういう環境の女性のしつけのよさと良識、ややありきたりの教養の判断にとどまっていて、作家として偶然めぐり合っている苦しい可能性を生かしきっていない。題材に匹敵する創作の方法が、この作家のところにないのは残念である。

人民的立場に生きる婦人として、生活の実体そのものから、はっきり民主的な地盤に立って生れ出て来ている作家は、既成の人々の生活と文学との上に見られるギャップが、素朴なりに埋められている点に注目しなければならない。多面的な日常生活の困難ととりくみながら、家庭の主婦であり、小さい子供の母である早船ちよが、「峠」「二十枠」「糸の流れ」「季節の声」「公僕」など、次々に力作を発表しはじめている。早船ちよは、「峠」の抒情的作風からはやい歩調で成長してきて、取材の範囲をひろめながら日本の繊維産業とそこに使役されている婦人の労働についてはっきり労働階級の立場から書きはじめている。