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おんなけいず

婦系図

泉 鏡花

「やまと新聞」1907(明治40)年1~4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 172,760 字 · 343 页

青空文庫

)を色で云って、臈たく生垣から、二階を振仰ぐ。

主税はたちまち思いついたように、

「お嬢さん、」と云うや否や、蝙蝠傘を投出すごとく、井の柱へ押倒して、勢猛に、上衣を片腕から脱ぎかけて、

「久しぶりで、私が洗って差上げましょう。」と、脱いだ上衣を、井戸側へ突込むほど引掛けたと思うと、お妙がものを云う間も無かった。手を早や金盥に突込んで、

「貴娘、その房楊枝を。――浅くとも清き流れだ。」

五十三

「あら、乱暴ねえ。ちょいと、まだ釣瓶から雫がするのに、こんな処へ脱ぐんだもの。」

と躾めるように云って、お妙は上衣を引取って、露に白い小腕で、羽二重で結えたように、胸へ、薄色を抱いたのである。

「貴娘は、先生のように癇性で、寒の中も、井戸端へ持出して、ざあざあ水を使うんだから、こうやって洗うのにも心持は可いけれども、その代り手を墨だらけにするんです。爪の間へ染みた日にゃ、ちょいとじゃ取れないんですからね。」

「厭ねえ、恩に被せて。誰も頼みはしないんだわ。」

「恩に被せるんじゃありません。爪紅と云って、貴娘、紅をさしたような美い手の先を台なしになさるから、だから云うんです。