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おんなけいず

婦系図

泉 鏡花

「やまと新聞」1907(明治40)年1~4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 172,760 字 · 343 页

青空文庫

ちと黙ったか、と思うと、め組はきょろきょろ四辺を見ながら、帰天斎が扱うように、敏捷く四合罎から倒にがぶりと飲って、呼吸も吐かず、

「それからね、人を馬鹿にしゃあがった、その痘痕めい、差配はどこだと聞きゃあがる。差配様か、差配様は此家の主人が駈落をしたから、後を追っかけて留守だ、と言ったら、苦った顔色をしやがって、家賃は幾干か知らんが、前にから、空いたら貸りたい、と思うておったんじゃ、と云うだろうじゃねえか。お前さん、我慢なるめえじゃねえかね。こう、可い加減にしねえかい。柳橋の蔦吉さんが、情人と世帯を持った家だ、汝達の手に渡すもんか。め組の惣助と云う魚河岸の大問屋が、別荘にするってよ、五百両敷金が済んでるんだ。帰れ、と喚くと、驚いて出て行ったっけ、はははは、どうだね、気に入ったろう、先生。」

「悪戯をするじゃないか。」

「だって、お前さん、言種が言種な上に、図体が気に食わねえや。しらふの時だったから、まだまあそれで済んだがね。掏摸万歳の時で御覧じろ、えて吉、存命は覚束ねえ。」

と図に乗って饒舌るのを、おかしそうに聞惚れて、夜の潮の、充ち満ちた構内に澪標のごとく千鳥脚を押据えて憚からぬ高話、人もなげな振舞い、小面憎かったものであろう、夢中になった渠等の傍で、駅員が一名、密と寄って、中にもめ組の横腹の辺で唐突に、