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おんなけいず
婦系図
泉 鏡花
「やまと新聞」1907(明治40)年1~4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 172,760 字 · 343 页
と真面目で、頭を掉って、
「不残叩き売った道具のお銭が、ずッしりあるんだ。お前さんが、蔦ちゃんに遣れって云うのを、まだ預っているんだから、遠慮はねえ、はははは、」
「それじゃ遠慮しますまいよ。」
と乗込んだ時、他に二人。よくも見ないで、窓へ立って、主税は乗出すようにして妙なことを云った。それは――め組の口から漏らした、河野の母親が以前、通じたと云う――馬丁貞造の事に就いてであった。
「何分頼むよ。」
「むむ、可いって事に。」
主税は笑って、
「その事じゃない、馬丁の居処さ。己も捜すが、お前の方も。」
「……分った。」
と後退って、向うざまに顱巻を占め直した。手をそのまま、花火のごとく上へ開いて、
「いよ、万歳!」
傍へ来た駅員に、突のめるように、お辞儀をして、
「真平御免ねえ、はははは。」
主税は窓から立直る時、向うの隅に、婀娜な櫛巻の後姿を見た。ドンと硝子戸をおろしたトタンに、斜めに振返ったのはお蔦である。
はっと思うと、お蔦は知らぬ顔をして、またくるりと背を向いた。
汽車出でぬ。
貴婦人
一
その翌日、神戸行きの急行列車が、函根の隧道を出切る時分、食堂の中に椅子を占めて、卓子は別であるが、一人外国の客と、流暢に独逸語を交えて、自在に談話しつつある青年の旅客があった。