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おんなけいず

婦系図

泉 鏡花

「やまと新聞」1907(明治40)年1~4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 172,760 字 · 343 页

青空文庫

)と云いましたよ。」

「じゃ、あとは、私をおなぶんなすったんでございましょうねえ。」

「御串戯おっしゃっては不可ません。」

「それでは、どんなお話でございましたの。」

「実は、どういう御婦人だ、と聞かれまして……」

「はあ、」

「何ですよ、貴女、腹をお立てなすっちゃ困りますが、ええ、」

と俯向いて、低声になり、

「女俳優だ、と申しました。」

「まあ、」と清い目をって、屹と睨むがごとくにしたが、口に微笑が含まれて、苦しくはない様子。

「沢山、そんなことを云ってお冷かしなさいまし。私はもう下りますから、」

「どちらで、」

と遠慮らしく聞くと、貴婦人は小児の事も忘れたように、調子が冴えて、

「静岡――ですからその先は御勝手におなぶり遊ばせ、室が違いましても、私の乗っております内は殺生でございますわ。」

「御心配はございません。僕も静岡で下りるんです。」

「お湯。」

と小児が云う時、一所に手にした、珈琲はまだ熱い。

三

「静岡はどちらへお越しなさいます。」

貴婦人が嬉しそうにして尋ねると、青年はやや元気を失った体に見えて、

「どこと云って当なしなんです。当分、旅籠屋へ厄介になりますつもりで。