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おんなけいず

婦系図

泉 鏡花

「やまと新聞」1907(明治40)年1~4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 172,760 字 · 343 页

青空文庫

」

「静岡は暢気でしょう、ほほほほほ。」

「三等米なら六升台で、暮しも楽な処ですって、婆さんが言いましたっけ。」

「あらまた、厭ねえ、貴下は。後生ですからその(お米は幾干だい、)と云うのだけは堪忍して頂戴な。もう私は極りが悪くって、同行は恐れるわ。」

「ええ、そうおっしゃれば、貴女もどうぞその手巾で、こう、お招きになるのだけは止して下さい。余りと云えば紋切形だ。」

「どうせね、柳橋のようなわけには……」

「いいえ、今も、子守女めらが、貴女が手巾をお掉りなさるのを見て、……はははは、」

「何ですって、」

「はははははは。」

と事も無げに笑いながら、

「(男と女と豆煎、一盆五厘だよ。)ッて、飛んでもない、わッと囃して遁げましたぜ。」

ツンと横を向く、脊が屹と高くなった。引かなぐって、その手巾をはたと地に擲つや否や、裳を蹴て、前途へつかつか。

その時義経少しも騒がず、落ちた菫色の絹に風が戦いで、鳩の羽はっと薫るのを、悠々と拾い取って、ぐっと袂に突込んだ、手をそのまま、袖引合わせ、腕組みした時、色が変って、人知れず俯向いたが、直ぐに大跨に夫人の後について、社の廻廊を曲った所で追着いた。