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おんなけいず
婦系図
泉 鏡花
「やまと新聞」1907(明治40)年1~4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 172,760 字 · 343 页
肩を引いて、胸を反らして、おっくらしく、身体で開けるようにして、次室へ入る。
板廊下を一つ隔てて、そこに四畳半があるのに、床が敷いてあって、小児が二人背中合せに枕して、真中に透いた処がある。乳母が両方を向いて寝かし附けたらしいが、よく寝入っていて、乳母は居なかった。
トそこを通り越して、見えなくなったきり、襖も閉めないで置きながら、夫人はしばらく経っても来なかった。
早瀬は灰に突込んだ堆い巻莨の吸殻を視めながら、ああ、喫んだと思い、ああ、饒舌ったと考える。
その話、と云うのが、かねて約束の、あの、ギョウテの(エルテル)を直訳的にという註文で、伝え聞くかの大詩聖は、ある時シルレルと葡萄の杯を合せて、予等が詩、年を経るに従いていよいよ貴からんことこの酒のごとくならん、と誓ったそうだわね、と硝子杯を火に翳してその血汐のごとき紅を眉に宿して、大した学者でしょう、などと夫人、得意であったが、お酌が柳橋のでなくっては、と云う機掛から、エルテルは後日にして、まあ、題も(ハヤセ)と云うのを是非聞かして下さい、酒井さんの御意見で、お別れなすった事は、東京で兄にも聞きましたが、恋人はどうなさいました。