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おんなけいず

婦系図

泉 鏡花

「やまと新聞」1907(明治40)年1~4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 172,760 字 · 343 页

青空文庫

ところが終列車で、浜が留まりだったから、旅籠も人目を憚って、場末の野毛の目立たない内へ一晩泊った。

(そんな時は、)

と酔っていた夫人が口を挟んで、顔を見て笑ったので、しばらくして、

(背中合わせで、別々に。)

翌日、平沼から急行列車に乗り込んで、そうして夫人に逢ったんだと。……

うつらうつら

十八

中途で談話に引入れられて鬱ぐくらい、同情もしたが、芸者なんか、ほんとうにお止しなさいよ、と夫人が云う。主税は、当初から酔わなきゃ話せないで陶然としていたが、さりながら夫人、日本広しといえども、私にお飯を炊てくれた婦は、お蔦の他ありません。母親の顔も知らないから、噫、と喟然として天井を仰いで歎ずるのを見て、誰が赤い顔をしてまで、貸家を聞いて上げました、と流眄にかけて、ツンとした時、失礼ながら、家で命は繋げません、貴女は御飯が炊けますまい。明日は炊くわ。米をるのだ、と笑って、それからそれへ花は咲いたのだったが、しかし、気の毒だ、可哀相に、と憐愍はしたけれども、徹頭徹尾、(芸者はおよしなさい。)……この後たとい酒井さんのお許可が出ても、私が不承知よ。