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おんなけいず

婦系図

泉 鏡花

「やまと新聞」1907(明治40)年1~4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 172,760 字 · 343 页

青空文庫

何だか河野の家を滅ぼそうというような様子だもの、家に仇する敵だわ。どうして、そんな人を、私厭でないんだか、自分で自分の気が知れなくッてよ。ああ、そして、もう、私、慈善市へ行かなくッては。もう何でも可いわ! 何でも可いわ。」

夫人と……別れたあとで、主税はカッと障子を開けて、しばらく天を仰いでいたが、

「ああ、今日はお妙さんの日だ。」と、呟いて仰向けに寝た――妙子の日とは――日曜を意味したのである。

宵闇

四十

同、日曜の夜の事で。

日が暮れると、早瀬は玄関へ出て、框に腰を掛けて、土間の下駄を引掛けたなり、洋燈を背後に、片手を突いて長くなって一人でいた。よくぞ男に生れたる、と云う陽気でもなく、虫を聞く時節でもなく、家は古いが、壁から生えた芒も無し、絵でないから、一筆描きの月のあしらいも見えぬ。

ト忌々しいと言えば忌々しい、上框に、灯を背中にして、あたかも門火を焚いているような――その薄あかりが、格子戸を透して、軒で一度暗くなって、中が絶えて、それから、ぼやけた輪を取って、朦朧と、雨曝の木目の高い、門の扉に映って、蝙蝠の影にもあらず、空を黒雲が行通うか何ぞのように、時々、むらむらと暗くなる……また明くなる。