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おんなけいず

婦系図

泉 鏡花

「やまと新聞」1907(明治40)年1~4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 172,760 字 · 343 页

青空文庫

撲倒すのを野蛮と云うんだ。」

お蔦は湯から帰って来た。艶やかな濡髪に、梅花の匂馥郁として、繻子の襟の烏羽玉にも、香やは隠るる路地の宵。格子戸を憚って、台所の暗がりへ入ると、二階は常ならぬ声高で、お源の出迎える気勢もない。

石鹸を巻いた手拭を持ったままで、そっと階子段の下へ行くと、お源は扉に附着いて、一心に聞いていた。

十九

「先生が酒を飲もうと飲むまいと、借金が有ろうと無かろうと、大きなお世話だ。遺伝が、肺病が、品行が何だ。当方からお給事をしようと云うんじゃなし、第一欲しいと仰有ったって、差上げるやら、平に御免を被るやら、その辺も分らないのに、人の大切な令嬢を、裸体にして検査するような事を聞くのは、無礼じゃないか。

私あ第一、河野。世間の宗教家と称うる奴が、吾々を捕えて、罪の児だの、救ってやるのと、商売柄好な事を云う。薬屋の広告は構わんが、しらきちょうめんな人間に向って罪の子とは何んだい。本人はともかくも、その親たちに対して怪しからん言種だと思ってるんです。

今君が尋問に及んだ、先生の令嬢の身許検べの条件が、ただの一ケ条でもだ。河野英吉氏の意志から出たのなら、私はもう学者や紳士の交際は御免蒙る。