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おんなけいず

婦系図

泉 鏡花

「やまと新聞」1907(明治40)年1~4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 172,760 字 · 343 页

青空文庫

もっとも出来た験はない。蓋しせざるにあらず能わざるなりでも何でも、道徳は堅固で通る。於爰乎、品行方正、御媒妁人でも食って行かれる……

二十四

道学先生の、その坂田礼之進であるから、少くともめ組が出入りをするような家庭? へ顔出しをする筈がない。と一度は怪んだが、偶然河野の叔父に、同一道学者何某の有るのに心付いて、主税は思わず眉を寄せた。

諸家お出入りの媒妁人、ある意味における地者稼の冠たる大家、さては、と早やお妙の事が胸に応えて、先ずともかくも二階へ通すと、年配は五十ばかり。推しものの痘痕は一目見て気の毒な程で、しかも黒い。字義をもって論ずると月下氷人でない、竈下炭焼であるが、身躾よく、カラアが白く、磨込んだ顔がてらてらと光る。地の透く髪を一筋梳に整然と櫛を入れて、髯の尖から小鼻へかけて、ぎらぎらと油ぎった処、いかにも内君が病身らしい。

さて、お初にお目に懸りまする、いかがでごわりまするか、ますます御翻訳で、とさぞ食うに困って切々稼ぐだろう、と謂わないばかりな言を、けろりとして世辞に云って、衣兜から御殿持の煙草入、薄色の鉄の派手な塩瀬に、鉄扇かずらの浮織のある、近頃行わるる洋服持。