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よめとりにだいき
嫁取り二代記
山本 周五郎
「婦人倶楽部」大日本雄辯會講談社、1937(昭和12)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,763 字 · 23 页
お笛の頬にさっと紅がさした。
「察してはおろうが、武家と云うものは諸事格式の厳しいものだ。近来は商家から嫁を迎えるものもないではないが、それさえきわめて稀なこと、――ましてその方のように、一度芸妓勤めなどした体では、正式の婚姻などなかなかむずかしい話だ。しかし……それとても神かけてできぬと云う訳ではない、ないけれども――直次郎はわしの跡目を継ぐ体、万一血統でも濁るような事があると先祖に対して申訳けがない」
「血が濁ると仰せられまするは?」
「稼業がらその方の体が、今まで潔白であろうとは思われぬ、と申すのだ」
「――潔白でござります」
お笛は静かに眼をあげた、「十四で座敷勤めに出ましてから六年のあいだ、のっぴきさせぬ危い折も両三度はござりました、――けれど、わたくし体だけは清浄に護り通して参りました、どうぞお信じくださいませ」
「だが、こればかりは証拠がないでの」
お笛はきゅっと唇をひき緊めたが、
「失礼ながら」
と膝へ手を置いて云った、「貴方さまには、お上を毒害してお家を横領しようと云う御野心がござりましょう」
「な、なにを云う」
突然の事に勘兵衛は仰天して、「冗談も事によるぞ、この牧屋勘兵衛に逆心ありとは、ど、どこを指して申すのだ」