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よめとりにだいき
嫁取り二代記
山本 周五郎
「婦人倶楽部」大日本雄辯會講談社、1937(昭和12)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,763 字 · 23 页
五
「では、――逆心なしと申す御証拠がござりましょうか?」
お笛は悪びれぬ調子で、「女の操とても同じこと、この通り潔白と云ってお眼にかける証拠はござりませぬ、けれど卑しい勤めをしていたからと云うだけで、そのお疑いは悲しゅうござりまする」
「もうよいもうよい」
勘兵衛は驚いて、「顔に似合わぬ理窟屋だなその方は、いずれにしても真偽は顕われずにおらぬものじゃ、それまでその方の言葉を信じておるとしよう、――や、邪魔した」
茶椀を置いて起つ、――気がついてみると、いつか小鉢の中の香の物をすっかり平げていた。勘兵衛はぶっきら棒に、
「この次も茶うけは香の物を頼む」
と云い捨てて照れ臭そうに立去った。
向うの気持を試みるつもりが逆に一本突込まれて、見事にやられた形である。それにしてもあの場合一寸も隙かさず、即妙に応待した智恵は芸妓育ちの女などに似合わぬ鋭さ、――生れながらに目はしのきく性質か、あるいは世間ずれのした悪智恵か、「まずそれを突止めてやろう」
勘兵衛は何やら頷いた。
五
雨の日の午さがりだった。
お笛の部屋から爪弾きの三味の音に合せて、一中節の渋い唄声が嫋々と聞えていた、――珍しや、寛いだ勘兵衛がお笛に唄わせながら、さっきから独り盃をあげているのである。