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よめとりにだいき
嫁取り二代記
山本 周五郎
「婦人倶楽部」大日本雄辯會講談社、1937(昭和12)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,763 字 · 23 页
二
二
「だが、――」
勘兵衛は気乗りせぬ調子で、「引取るとしても、どこへ住ませるんじゃ」
「私の離室が明いております」
「あそこはわしの茶室に使っているではないか」
「なに、もう片付けさせました、お道具は数寄屋へ運んであります」
「そう云う奴だ」
勘兵衛舌打をして、「始めからわしを丸め込むものと定めてかかりおる」
「御承知くださいますか」
「仕様がないじゃないか、いかんと云えばなんだかわしがその男を泥沼の底へ突落すことにでもなりそうな口振りじゃからの――えへん、だが引取る前に一度呼んでこい、わしがあってから……」
「もう来ております」
「――――」
「お笛どの、こちらへ」
振返って呼ぶと、中庭の生垣の蔭から一人の女が慎しくそこへ立現われた、――磨き込んだ小麦色の肌、切れ長のつぶらな眸子、漆黒の余るような髪を武家風に結いあげた二十あまりの、眼覚めるように美しい女である。いや勘兵衛驚いた。
「な、直次郎!」
「お笛どの御挨拶をなさい」
直次郎は構わずに云った、「こちらがお話し申した伯父上です。お役目は福山藩十五万二千石の切盛をする国家老だが、お若い頃から江戸詰めで御苦労を遊ばしただけあって、酸いも甘いもずんと噛分けておられる、この度もお許を引取って快く世話をしようと仰せられるのだ、よくお礼を申上げるよう」