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あんじゅうこん
安重根
谷 譲次
――十四の場面――
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 49,548 字 · 100 页
安重根は疲れた態でぼんやり椅子に掛けている。
柳麗玉 (嬉し気に)嫌な小母さん! ちょっとお話しにならない?
黄瑞露 もう晩いからね。(出ようとして安重根を見る)まあ、安さんの顔いろったらないよ。病気が悪いんじゃないだろうかねえ。
柳麗玉は心配そうに安重根を凝視める。「安重根ウラア!」の声が隣室に起る。
黄瑞露 (しんみりと)ねえ、柳さん。去年の春でしたかしら。一度安さんが煙秋から出て来たことがあったっけねえ。あの時分の安さんから見ると、このごろは相変りがしていますよ。さっきそこの裏口からはいって来た時、わたしゃ誰かと思った。(柳麗玉へ)どこで会ったの?
柳麗玉 (得意げに)先生の奥さまと一緒に、洪沢信さんの家へお湯へはいりに行って、あたしだけ一足先に出て来ると、洪さんの横丁でばったり――。
黄瑞露 でも、よござんしたねえ。
柳麗玉 (たのもしそうに安重根を見ながら)ええ、疲れていて、皆さんが待っていて下さるのにすまないけれど、今夜は誰にも会いたくない。何ですか、静かに考えたいことがあるって言うんですの。あたしも、皆さんに悪いようにも思いましたけれど、でも、なにしろ、大事な身体でしょう? それに、本人がそういって肯かないもんですから、ここなら、みんな集まっているだけに、かえって見つかりっこないと思って、ああして裏から