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あんじゅうこん
安重根
谷 譲次
――十四の場面――
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 49,548 字 · 100 页
そっとお伴れしましたのよ。
黄瑞露 ほんとに柳さんは気がつきますよ。今うちの人にだけこっそり耳打ちしておきましたからね。大丈夫心得ていますよ。知らん顔して、追っつけみんなを帰すでしょうから、安心してゆっくりおやすみなさいよ。
黄瑞露去る。長い間。
安重根 (苦笑)そいつあありがたい。そんなに人相が変ったんなら、誰に会ってもわかるまい。
隣室では禹徳淳の歌の音読がはじまっている。柳麗玉は忍び笑いする。
安重根 (歌声に聞き入って微笑)元気にやってるなあ。(柳麗玉の様子に気づいて)莫迦によろこんでいるねえ。君もおれにあいつを殺させたい一人なんだろう。みんなのように、ああしておれの志を壮として、行をさかんにしてくれるというわけか。
柳麗玉の笑いは涕泣きに変っている。
安重根 (憮然と)何だ、泣いているのか。
柳麗玉 (眼を拭いて)もうじき世界中に有名になる安さんと、こうしているなんて、あんまり嬉しいんで、つい――。同志の方があんなに大騒ぎしている安さんを、あたし、一人占めにしているんだわね。なんだかすまないような気がするわ。
安重根 (自嘲的に)ふん、おれは家族を迎えにハルビンへ行くんだ。