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いえのはなし

家の話

柳田 国男

「奉公」奉公会、1918(大正7)年1月~4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,799 字 · 23 页

青空文庫

史料編纂官の報告を見ても分るごとく、本来厳格なる意味における系図というものは少ないものであった。中世の各家に貴重せられておった系図に至っては、要するに、その家の領地が慣習法上、適当に相続せられておった事を証明する、一種いわゆる手継文書の附属書類に過ぎなかったので、家の領地がなくなれば、すなわち地租がただの農民より特に軽いという状態がなくなれば、もはや不用のものであった。

江戸時代の初期から、盛んに行われた由緒書というものも、もとはこれと目的を同じゅうするものであった。すなわち大小の藩において、何ゆえに甲乙少数の領民にのみ、ある特典を与えているかという説明を、時々その本人から表明させたのがこの由緒書である。士分の者にあっては、これによく似た先祖書というものを、代替りごとに差し出さしむる例規であった。自他ともに昔のことを忘れしめぬ美風の一つであったが、要するにその動機は、ただ経済上の優遇の一条件に過ぎなかったのである。

しかるにおいおいと世の中が逼迫して、貴族は財政に弱って税を免じてやることができず、実を去って虚名のみを付与するようになったのは、近世の一変遷で、いわば泰平の兆候といってよろしい。