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いえのはなし
家の話
柳田 国男
「奉公」奉公会、1918(大正7)年1月~4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,799 字 · 23 页
偽系図
士族であるがゆえに自負するとすれば、それは単に二百年か三百年の履歴によって威張るだけである。維新の少し前、洋式調練が各藩に入った時、従来の徒士足軽では、人数が足らぬので、農兵と称して新たに村落の内から下級の卒を抱えた処があった。その時の彼等の悦びは非常に大きいもので、ある藩においては、家を出て行く際に女房に向って「吾々侍でも悲しいからお前の泣くのはもっともだ」といったという一つの笑話すら遺っている。そうしてつい四五年前までこの連中は、士族の称号を得るために旺んな運動をしていた。今日のいわゆる士族が、その偶然の境遇のために自負をするならば、要するにこれらの農兵どもと五十歩百歩である。
偽系図
最近百年ほどの間、偽系図を作って生活していた学者らしからぬ学者が、指を折って数えるほど諸国にあった。金ができると家の格式を作りたがるのは普通の人情で、二代三代と主人が代って、かつてはしがない水呑百姓であったことを、近郷の者の忘れた頃に、そろそろと自分の家が源平時代からでも、その土地に住んでおったというような顔をするのは、普通の社会状態であったが、もともと系図の有無によって家の古さ新しさ、すなわちいわゆる門閥の大小を決せんとしたのが、近世に始まった誤謬である。