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いえ

家

島崎 藤村

02 (下)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 141,411 字 · 285 页

青空文庫

正太はその意味を読んだ。思わず拳を堅めてペン軸の飛上るほど机をクラわせた。

「橋本君、そりゃ何だネ」と幹部の一人が聞いた。

「こういう訳サ」正太は下口唇を噛みながら笑った。「昨日一人の叔父が電話で出て来いというから、僕が店から帰りがけに寄ったサ。すると、例の一件ネ、あの話が出て、可恐しい御目玉を頂戴した。この叔父の方からも、いずれ何か小言が出る。それを僕は予期していた。果してこんなものを送って寄した」

「何の洒落だい」

「こりゃ、君、僕に……溺死するなという謎だネ」

「意見の仕方にもいろいろ有るナア」

幹部の人達は皆な笑った。

その日、正太は種々な感慨に耽った。不取敢叔父へ宛てて、自分もまた男である、素志を貫かずには置かない、という意味を葉書に認めた。仕事をそこそこにして、横手の格子口から塩瀬の店を出た。細い路地の角のところに、牛乳を温めて売る屋台があった。正太はそれを一合ばかり飲んで、電車で三吉の家の方へ向った。

叔父の顔が見たくて、寄ると、丁度長火鉢の周囲に皆な集っていた。正太は叔父の家で、自分の妻とも落合った。

「正太さん、妙なものが行きましたろう」