轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

いえ

家

島崎 藤村

02 (下)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 141,411 字 · 285 页

青空文庫

「大きく『熊』という字を書いて、父親さんが座敷牢から見せたことが有ったぞや」とお種は弟に微笑んで見せて、「皆な、寄って集って、俺を熊にするなんて、そう仰ってサ……」

「熊はよかった」と三吉が言った。

「それは、お前さん、気分が種々に成ったものサ。可笑しく成る時には、アハハ、アハハ、独りでもう堪えられないほど笑って、そんなに可笑しがって被入っしゃるかと思うと、今度は又、急に沈んで来る……私は今でもよく父親さんの声を覚えているが、きりぎりす啼くや霜夜のさむしろに衣かたしき独りかも寝む、そう吟じて置いて、ワアッと大きな声で御泣きなさる……」

お種は激しく身体を震せた。父が吟じたという古歌――それはやがて彼女の遣瀬ない心であるかのように、殊に力を入れて吟じて聞かせた。三吉は姉の肉声を通して、暗い座敷牢の格子に取縋った父の狂姿を想像し得るように思った。彼はお種の顔を熟と眺めて、黙って了った。

この姉が上京する前、正太から話のあった達雄との会見――今にそれを姉が言出すか言出すかと、三吉は心に思っていた。お種は、弟の方で待受けたようなことを何事も言出さずじまいに、郷里の方の変遷などをいろいろと語り聞かせた後で、一緒に階下へ降りた。