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いえ
家
島崎 藤村
02 (下)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 141,411 字 · 285 页
達雄の失敗に懲りて、幸作はすべて今までの行き方を改めようとしていた。暮しも詰めた。人も減らした。炉辺に賑やかな話声が聞えようが、聞えまいが、彼はそんなことに頓着していなかった。ドシドシ薬を売弘めることを考えた。「大旦那の時分には、あんなに多勢の人を使って、今の半分も薬が売れていない――あの時分の人達は何を為ていたものだろう――母親さん達は皆なの食う物をこしらえる為にいそがしかった」こう思っていた。お種に取って思出の部屋々々も彼には無用の長物であった。
こういう実際的な幸作のところへ、旧家の空気も知らないお島が嫁いて来た。達雄やお種から見ると、二人は全く別世界の人であった。若い夫婦はどうお種を慰めて可いか解らなかった。
三吉はこの人達の居る方へ来て見た。そこは以前彼が直樹と一緒に一夏を送った座敷で、庭の光景は変らずにある。谷底を流れる木曾川の音もよく聞える。壁の上には、正太から送って来た水彩画の額が掛っている。こういうものを見て楽む若旦那の心は幸作にもあった。
「姉様を呼んでお出」
と幸作は妻に吩咐けた。
豊世は困ったような顔付をして、奥座敷の方から来た。