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いえ
家
島崎 藤村
02 (下)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 141,411 字 · 285 页
とお俊は笑って、正太の方を見ずに、お延の方を見た。
「静かな田舎から、こういう刺激の多い都会へ出て来るとネ」と正太も庭へ下りてから言った。
叔父、甥、姪などの交換した笑声は、客の耳にも睦まじそうに聞えた。お延は自分が笑われたと思ったかして、袖で顔を隠した。お俊は着物の襟を堅く掻合せていた。
郊外の道路には百日紅の花が落ちた。一夏の間、熱い寂しい思をさせた花が、表の農家の前には、すこし色の褪めたままで未だ咲いていた。実が住む町のあたりは祭の日に当ったので、お俊はお延を連れて、泊りがけに行く仕度をした。
「叔父さん、晩召上る物は用意して置きましたから」とお俊が言った。
「よし、よし、二人とも早くおいで。叔父さんが御留守居する――俺は独りでノンキにやる」
こう答えて、三吉はいくらかの小使を娘達にくれた。
二人の姪は明日の七夕にあたることなどを言合って、互に祭の楽しさを想像しながら、出て行った。娘達を送出して置いて、三吉はぴッたり表の門を閉めた。掛金も掛けて了った。
窓のところへ行くと、例の紅い花が日に萎れて見える。そのうちに三吉は窓の戸も閉めて了った。家の内は、寺院にでも居るようにシンカンとして来た。